おそらく、TOEICに慣れている人が「難問」と認定するアイテムが5問あった。これは、実際のテストと比べて、やや多い。それを理由に「この模試は難し過ぎる」とか「パート5が鬼だ」といった評価を得るかも知れない。実際、オンライン書店でレビューを読むと、そのような方向性の感想がいくつか見つかった。
難易度について語る際には注意が必要だ。なぜなら、それが何を意味するか定義しなければ、意味が曖昧だから。例えば、模試のパート5に入っている40問のうち5問が本当に難問だとして、実際のテストに出題される難問は2問だとする。3問だけ難問が多い。これを理由に「このパート5は難し過ぎる」とか「このパート5は鬼だ」と表現するのは妥当か。実際のテストに「非常に易しい問題」が5問出るとして、この模試にそのような問題が8問あるかも知れない。もしそうであれば、易しい問題が多めに収録されていることになるから、「難し過ぎる」と呼べるかどうか怪しいのではないか。もともと10問以上ミスをする人々にとっては、むしろ適切なレベルの教材かも知れない。
また、比較対象として使われがちな「実際のテスト」に絶対的な難易度基準はない。公開テストは日本で年10回も実施されており、テストフォームは20種類前後ある。それらの難易度は決して同じではない。パート5だけ見ても、難問や易しい問題の数は毎回少しずつ違う。だから、模試の難易度を実際のテストと比較するにしても、どのテストと比べるかによって結論が変わるかも知れない。
実際のところ、難易度について語る人々は、たいていTOEICに詳しい人だ。おそらく、注目しているのは「自分にとって難問だと感じる問題の数」だけだろう。易しい問題の数は気にしていないだろう。この推測が正しいのであれば、主語を具体化するべきだ。「このパート5は鬼だ」ではなく、「このパート5には(自分にとって難しい)鬼レベルの問題が3つあった」などと表現するべきだと思う。そして、できれば、その鬼レベルの問題が実際のテストに出題されそうなものか、そうでないかも合わせてコメントするべきだろう。一方、読み手は「このパート5は劇ムズ」みたいなコメントを見たら、それが何を意味しているのか考えるべきだと思う。3問だけ難問が多めに収録されているだけかも知れないし、10問が鬼レベルかも知れない。場合によっては、TOEICに出題されなさそうな変な問題が5問あるのかも知れない。批判的に読む訓練にもなる。
前回の試験「簡単な問い6割、平均正答率付近の問い1割、難問3割」
今回の試験「簡単な問い3割、平均正答率付近の問い6割、難問1割」
とすると、超初心者は「今回は難しかった」といい、超上級者は「今回は簡単だった」と言うでしょう。「私は今回は難しかった。」と言った場合、私はどういう立場(例えば現在のスコア)の人なのかを明示しないと伝わらないですね。
※仮説に偏りがないようにしましたが、まだ偏りがあると思います。自分に有利な数字かと思いますが、あといい例が思いつかないので、今回はこの例にします。
コメントありがとうございました。お書きになられた例においては、確かに超初心者は「今回は難しかった」、超上級者は「今回は簡単だった」と感じるでしょうね。