2015年01月09日

難易度の意味

リサーチのために、ある問題集に取り組んでみた。TOEICの模擬試験が入っている本だ。時間の制約があったのでパート5の40問だけやってみたら、1問ミスした。

おそらく、TOEICに慣れている人が「難問」と認定するアイテムが5問あった。これは、実際のテストと比べて、やや多い。それを理由に「この模試は難し過ぎる」とか「パート5が鬼だ」といった評価を得るかも知れない。実際、オンライン書店でレビューを読むと、そのような方向性の感想がいくつか見つかった。

難易度について語る際には注意が必要だ。なぜなら、それが何を意味するか定義しなければ、意味が曖昧だから。例えば、模試のパート5に入っている40問のうち5問が本当に難問だとして、実際のテストに出題される難問は2問だとする。3問だけ難問が多い。これを理由に「このパート5は難し過ぎる」とか「このパート5は鬼だ」と表現するのは妥当か。実際のテストに「非常に易しい問題」が5問出るとして、この模試にそのような問題が8問あるかも知れない。もしそうであれば、易しい問題が多めに収録されていることになるから、「難し過ぎる」と呼べるかどうか怪しいのではないか。もともと10問以上ミスをする人々にとっては、むしろ適切なレベルの教材かも知れない。

また、比較対象として使われがちな「実際のテスト」に絶対的な難易度基準はない。公開テストは日本で年10回も実施されており、テストフォームは20種類前後ある。それらの難易度は決して同じではない。パート5だけ見ても、難問や易しい問題の数は毎回少しずつ違う。だから、模試の難易度を実際のテストと比較するにしても、どのテストと比べるかによって結論が変わるかも知れない。

実際のところ、難易度について語る人々は、たいていTOEICに詳しい人だ。おそらく、注目しているのは「自分にとって難問だと感じる問題の数」だけだろう。易しい問題の数は気にしていないだろう。この推測が正しいのであれば、主語を具体化するべきだ。「このパート5は鬼だ」ではなく、「このパート5には(自分にとって難しい)鬼レベルの問題が3つあった」などと表現するべきだと思う。そして、できれば、その鬼レベルの問題が実際のテストに出題されそうなものか、そうでないかも合わせてコメントするべきだろう。一方、読み手は「このパート5は劇ムズ」みたいなコメントを見たら、それが何を意味しているのか考えるべきだと思う。3問だけ難問が多めに収録されているだけかも知れないし、10問が鬼レベルかも知れない。場合によっては、TOEICに出題されなさそうな変な問題が5問あるのかも知れない。批判的に読む訓練にもなる。

posted by ヒロ前田 at 20:14| Comment(2) | 記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
同様の例として、次のような場合は簡単な問題と表記すべきか難しいと表記すべきか悩む場合があります。
前回の試験「簡単な問い6割、平均正答率付近の問い1割、難問3割」
今回の試験「簡単な問い3割、平均正答率付近の問い6割、難問1割」
とすると、超初心者は「今回は難しかった」といい、超上級者は「今回は簡単だった」と言うでしょう。「私は今回は難しかった。」と言った場合、私はどういう立場(例えば現在のスコア)の人なのかを明示しないと伝わらないですね。
※仮説に偏りがないようにしましたが、まだ偏りがあると思います。自分に有利な数字かと思いますが、あといい例が思いつかないので、今回はこの例にします。
Posted by Ringo at 2015年01月10日 11:22
Ringoさん
コメントありがとうございました。お書きになられた例においては、確かに超初心者は「今回は難しかった」、超上級者は「今回は簡単だった」と感じるでしょうね。
Posted by 前田 at 2015年01月11日 01:36
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。